劇画人間革命(35)

過酷な獄中生活とこの十年間の無理が、戸田の身体を蝕んでいた。
戸田は目標への確かな手応えと同時に、自己の生涯もまた、確実に終末へと近づきつつあることを感じていた――だが、「まだ、私は死ねない!」 苦労というものは、次から次へとよく続くものだ。
これまでも何とか解決してきたが、これからも苦しんでは解決していくだろう。
それが信心の力であり、信心の証明なのだ。
今の私には、それしか信じられないが、それだけで十分と思っている。
ビキニ島原爆実験で、日本人23名が被爆したと報じられた。
「アインシュタイン博士などの世界の科学者たちが、原子戦争で人類は滅亡すると警告しているにもかかわらず、世界の指導者たちは、この危険な兵器の開発をやめようとしない。
――ユネスコ憲章にも“戦争は人の心の中で生まれるものだから、人の心の中に平和の砦を築かなければならない”と謳いあげている。
だが、この移ろいやすい心、神にもなれば悪魔にもなる……」「人生は諦めてはいけません。
あくなき挑戦――その中にこそ真の人生の勝利があります。
ところが残念なことに、人は何度か挫折すると、もうオレはダメだと諦め、人生なんてこんなものだと思い込んでしまう。
そこに必要なのは、まだ負けるものか、まだ自分はやれる、と挑戦する勇気なのです」 力強い発言の一方、山本伸一の身体にも病魔が襲いかかっていた。
「今がボクにとって最高最大の試練の時に違いない! 負けるものか!!」戸田と山本は、戸田の故郷である北海道厚田村を訪れた。
そして師匠は弟子に向かって、こう語った。
「僕は日本の広宣流布の磐石な礎をつくる。
君は世界の広宣流布の道を開くんだ。
構想だけは僕がつくっておこう。
世界は広い。
そこには苦悩にあえぐ民衆がいる。
まだ戦火に怯える子供たちもいる。
東洋に、そして世界に妙法の灯をともしていくんだ。
この私に代わって!」昭和29年の秋、日本の政局は混迷の中にあった。
……いつの時代も政治家たちは権力の争奪に専念するばかりで、常に民衆が犠牲になってきた。
人類は愚行を繰り返して今日に及んでいる。
いつの時代も、人間は政治権力の魔性に魅入られ操られてきたといってもよい。
しかし、これは単に政治の次元で解決のつく問題ではない。
政治そのものに巣くう魔力が問題なのだ。
この魔というものは、政治を支配する者、つまり政治家の内に巣くっている。
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